あの日から1年4ヵ月が過ぎ、ようやくプレハブの仮設店舗棟で店を再開する
ことができました。祖父の代から続く店も倉庫も自宅も流されてしまい、残った
のは軽トラック2台だけ。それでも、電器屋を辞めようとは思いませんでした。
当時、避難先から地元の様子を見に来ると、かろうじて家が残ったお客さま
から、漏電していないか見てほしいとか、アンテナや電気製品の修理をして
ほしいとか、声をかけられました。お売りしたものの面倒は、責任をもって
最後まで見たいと思いましたし、長年お付き合いくださっているお客さまの
困難を放っておくことなんてできない。街の電器屋としての使命感が、この
仕事を続けさせました。工具も何もないような状況だったのですが、全国の
電器屋仲間が必要な道具を届けてくれたり、食料や服などいろいろ支援
してくれて、本当にありがたかったです。いまも、感謝の気持ちでいっぱい
です。仲間からは、あの頃は顔がひきつっていたぞ、と言われます。
ずーっと店舗のない状態で仕事を続けていたのですが、心の支えになったのは、
「また何か買うときは、あんたのとこで買いたいと思ってるよ」とおっしゃって
くださった、お客さまの言葉です。従業員のおじいちゃんからは、「早くまた店
を出してくれないと、うちの嫁の元気がでないよ」とも言われましたしね。
みんなの励ましがあってこその再開です。いまの仮設店舗は、以前とは比べ
ものにならないほど、小さな店です。でも、電器屋らしくしたいと、わずかでは
ありますが冷蔵庫や洗濯機といった大物商品も並べています。仮設住宅には
一通り電気製品が揃っていますから、正直、商売としてはなかなか厳しいの
ですが、商品があると、それだけで気持ちも明るくなりますね。
お客さまはあちこちバラバラになってしまいましたが、遠くの仮設住宅
からでも、「お茶っこ、飲みに来たよ~」と昔なじみのお客さまが店に
いらしてくださいます。「狭い仮設だと、気も休まらんしねぇ」などと言い
合いながら、母とおしゃべりを楽しんでいます。考えてみれば、これまで、
こんなひとときさえ持つ余裕などなかった。人と会えるって、いいですね。
「お客さんの顔を見るだけで、元気がでるわぁ」と母もよろこんでいます。
いまなお先の見えない暮らしが続き、ともすれば、お客さまも私たちも
心が折れてしまいそうな毎日です。早く、ふつうの生活を取り戻したい。
一面の更地のなかに灯る店の明かりが、「その日まで、くじけず頑張って
いこう」という、みんなの気持ちの拠り所になればと願っています。
近くに住んでいるからこそ、地域の事や気候の事もよくわかってくれた上で、
最適なリフォームを提案します。
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