うちの店は四国の東端、徳島県阿南市にあります。祖父の代からでんきやを営み、
現在は、社長である父と母、父の弟である叔父さん、長年勤めてくれている店長さん、
そして僕と弟の6人で店をやっています。近くの答島港から連絡船で30分ほどのところに、
伊島という離島があります。人口はいまでは200人にも満たず、島の人たちのほとんどが、
荒海で育ったイセエビ、アワビ、サザエ、タイなどの漁を生業としています。
島には、漁業組合が運営する食料品や日用品のマーケットが一軒あるだけで、
一日3便の連絡船が生活の命綱。朝の第一便はパンと野菜、昼の二便は肉類といったように、
食料品をはじめ新聞や郵便物など、すべて船で運ばれてきます。
もちろん、でんきやさんは一軒もありません。僕たちは今日、この伊島のお客さまのところに、
エアコン2台の取り替えと、新しいテレビのお届けに伺いました。
店から答島港まで軽トラック4台でエアコンやテレビを運び、朝8時30分発の第一便に
商品や工具を積み込んで出発です。軽トラックはそのまま、答島港に駐車しておきます。
島での仕事は、ちょっと忘れ物をしたからといって店に取りに帰るわけにいきませんから、
準備もちょっと緊張しますね。ふつうはエアコンの設置工事やテレビの納入は
二人でやることが多いのですが、今日はエアコンの設置が2台ありますし、
1台はちょっと厄介な場所での取り替えなので、四人がかり。離島での作業は、
帰りの便に間に合うようにと、時間との勝負なんです。
伊島港に着いたら、“ねこ”と呼ばれる手押し車に商品を載せ、お客さまのお宅に運びます。
実はこの伊島には、クルマが一台もありません。クルマが走れるような道がないのです。
エアコンの取り替え工事を行ったお宅は、以前は旅館を営んでいらっしゃいました。
父が数年前に伊島で電気工事をしたとき、帰りの船がシケで運休になったことがあるんですが、
そのとき泊めてくださったお宅です。このあたりは波が荒いですし、台風のメッカでもあり、
島に渡ると帰れないこともたびたびです。泊めていただいた晩、父がテレビを見ていると、
どうもテレビの映りがわるい。島のテレビは、山の上に設置されている共同アンテナで
受信するんですが、きっと向きがおかしくなっているに違いない。気になって仕方がない父は、
誰に頼まれたわけでもないんですが、翌朝ハシゴを借りて、山の上の共同アンテナを
直しに行ったとか…。でんきやさんがいない島では、何かご不便があっても気軽に頼むわけにも
いかず、我慢されていることも多いんじゃないかと、島の方たちのくらしが気にかかります。
エアコンの設置工事をしていたら、伊島の小学校の校長先生が通りがかり、
声をかけてくださいました。伊島には小学校と中学校はありますが、高校はなく、
中学を卒業すると、ほとんどみな島を出ていくとか。今年は小学校にひとり入学して
全校生徒は9人、中学生は5人だそうです。うちの店は以前、この小学校に大型テレビや
電子黒板をお届けしたことがあり、子どもたちは大喜びでした。また、島民の方たちの
安全安心の要となる消防団の施設に、防災無線システムを設置したこともあります。
離島での仕事は一日がかりですし、何かと大変なこともあります。
でも、でんきやさんがない島でのくらしが、できる限り安心で快適であるよう、
僕たちが支えてさしあげたい気持ちでいっぱいです。今日も島の方から、
「でんきやさんが来てくれていて、よかったー。ついでに、下水処理施設の電気の具合を
見ていってくれんかー」と声をかけられました。
わたしたち夫婦は二人とも、伊島の生まれ。長い間、徳島本土でくらしていたんですが、
島で旅館を営んでいた母が高齢になったこともあり、また島に帰ってきました。
伊島は昭和30年代はまだ電気もなくてねぇ、自家発電だったんですよ。
それが、トイレは水洗になるし、これでもとても便利になったんです。
食料品や日用品などは連絡船で本土に渡り、買いに行ったりします。
答島港にクルマを置いていましてね。でも、大きな家電のお買い物はそういうわけに
いきませんからねぇ。何かあったときも、気持ちよくとんで来てくださる
親切なでんきやさんがいいので、新居さんとこに頼りっぱなし。
こんな島までわざわざ来ていただくのは、ご面倒をおかけしていると思うのですが、
本当によくやってくださいます。
近くに住んでいるからこそ、地域の事や気候の事もよくわかってくれた上で、
最適なリフォームを提案します。
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