電球の交換や乾電池の入れ替えなどでお客さまのところに伺うと、「お茶でも飲んでってー」と
引き留められることがよくあります。ひとり暮らしのお年寄りですと、誰とも喋らないまま一日が
過ぎていた、そんなこともあると思うんです。「僕でよかったら一緒にお喋りしましょう」、
そんな気持ちで、引き留められるまま、こたつに入ってみかんを食べながら、
お年寄りのお話し相手になったりします。僕はおじいちゃんやおばあちゃんと
一緒に暮らしたことがないので、お年寄りとお話しするのは新鮮で、キライじゃないんです。
僕が生まれる前の町の話を聞くのは興味深いですし、
やっぱり年の功といいますか、教えられることが多いんです。
お客さまのひとりに、80歳過ぎのおばあちゃんがいらっしゃるんですが、
昨年までご病気で療養されていまして。ご自宅に戻られてからは、大好きなカラオケをするのが
リハビリなんです。「次はこの曲を歌えるようになりたいから、カラオケ用のCDを買ってきてー」と
よく頼まれます。CDをお持ちしてお宅に伺うと、僕も必ず一曲はお付き合いさせられるんです。
熱唱するおばあちゃんを見ていると、お元気になられてよかったなぁと、胸が熱くなりますね。
こういうことって、でんきやの仕事とは関係ないかもしれませんが、僕はお客さまが
喜んでくださることなら、“何でも屋”でいいと思っているんです。
この前は、修理で伺ったお客さまが風邪気味で、飼っていらっしゃる犬の散歩を頼まれまして。
僕が散歩に連れていったんです。
うちの店は両親が創業した店で、僕は震災までは栃木県で別の仕事をしていました。
震災があった3月11日は、ちょうど翌日に開催するパナソニックフェアの準備をしていたところで、
大型テレビや冷蔵庫、洗濯機などを店内に所狭しと並べていたそうなんです。
そこに、凄まじい地震。店のガラスは割れて飛び散り、商品は足の踏み場もないほど
散乱して壊滅状態。僕は店の片付けを手伝うために帰ってきました。父と母は、
お客さまのお宅の倒れたテレビアンテナを立て直したり、エコキュートを修理するために、
町中を奔走する毎日。食糧も手に入らない状態が続いていたのですが、ちょうどフェアの
プレゼント用に用意していたラーメンがあったので、お客さまのお宅にお配りして回っていました。
自分の店のことより、お客さまのために駆け回る両親を見て、こういう仕事がしたいと、
でんきやを継ぐ決心をしたんです。お客さまからは、「おー、兄ちゃんが帰ってきたんかぁ」と
歓迎してくださって。いまでは、でんきやが天職かとも思います。
近くに住んでいるからこそ、地域の事や気候の事もよくわかってくれた上で、
最適なリフォームを提案します。
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