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Vol.79
先端テクノロジーと暮らしを結ぶ話

限界集落もある田舎だって、
時代の先端をいく
暮らしを楽しんでほしくてね。

山形県寒河江市/西村山郡
カイノ電器
海野晋

うちの店は大正15年(昭和元年)、
ラジオ放送の開始に触発された祖父が創業しました。
新しいことを求める血筋が、私にも受け継がれていますね。

うちの店が創業したのは大正15年ですから、まもなく92周年。街のでんきやさんの中でも、おそらく三本の指に入るほど古くからある店だと思います。

始めたのは、大のキカイ好きだった祖父。

当時、実家は金物屋だったのですが、祖父は大正14年に始まったラジオ放送に興味を持ち、趣味で組み立てたラジオを店先で鳴らしていたとか。

すると、町の人たちから、自分にも作ってくれという注文が殺到。カイノ電器のルーツである、海野ラヂオ店の誕生となりました。

いまでもうちの店には、玉音放送を聞いたという松下電器製作所製のラジオが残っています。店は順調だったものの、昭和11年、住んでいた左沢(あてらざわ)に大火が発生。店も住まいも焼け出されるという苦難に見舞われました。

現在、カイノ電器は寒河江店と大江店との2店舗があるのですが、火災からの起死回生を図って移転した先が、現在の大江店。

ちょっと余談となりますが、現・会長である私の父親が生まれたのは、なんと引っ越しの翌々日。二代目として店を継いだ父の運命めいたものを感じます。父も祖父と同様、根っからのキカイ好き。中学生の頃から、配線図集を見ながらラジオの修理をしていたといいます。

そんな父が店を継いだのは、ちょうどラジオからテレビへと時代が移り変わるとき。新しいものに興味津々だった父は、メーカーが開催するテレビ技術講習会にも積極的に参加し、テレビに関する知識と修理技術の腕を磨いたといいます。

時代の先端をいくものに関心をもつ性格は、三代目である私も受け継いでいるように思います。

いまは、「衣食住+情報」の時代。
ITというと気後れしてしまうお年寄りにこそ、
ITの恩恵を享受してほしいと思うんです。

実は私が子どもの頃からハマったのが、コンピュータ。

小学4年生のとき、父がマイコンを持ち帰って以来、すっかりコンピュータの世界に夢中になり、二進法なども独学で勉強するようになりました。

情報ネットワーク社会になったいま、パソコンやインターネットを使いこなしている人と使えない人との情報格差が問題になっています。

この地域も限界集落を抱えるなど高齢化が進んでいますが、お年寄りも時代に取り残されることなく、新しい世界と楽しく触れ合ってほしい。

そんな思いで、コンピュータだ、インターネットだ、というと腰が引けてしまう方のために、マンツーマンのパソコン教室を店の一角で開いています。生徒さんは70代の方が多く、なかには86歳の方も。

パソコンを買ったものの、使うことに挫折しかけていた方々が、楽しそうにキーボードを叩いています。

また私は、でんきやが通常必要とする電気工事士などの資格以外にも、デジタル第1種という通信ネットワーク分野の資格も取得。

お客さまがご自宅のネットワーク環境を整えようとすると、何かとわからないこともでてくると思うのですが、心細くないよう私たちがサポート。

通信会社が行う配線工事も一緒に立ち会い、ちょっと専門的な話になる場面では、お客さまにわかりやすく翻訳。お客さまの脇に立ち、お客さまの思いを汲み取ってお伝えするようにしています。

考えてみれば私たちは、でんきやというよりも、時代の先端技術をみんなの暮らしに取り入れられるようにする仲介役。

限界集落もあるような田舎かもしれませんが、自宅でショッピングできるようになったり、お風呂でテレビを見られるようになったり、新しい暮らしを楽しんでほしいと思います。

90年以上にわたって、
でんきやを続けてこられたことに感謝するとともに、
この町で生きている喜びを感じています。

ラジオからテレビへ、テレビからデジタルネットワークへ。

90年以上もの間、商売を続けてこられたのも、時代の変化を自らが楽しむ気風と、そして何よりも、この町の方々に支えられているからこそと思います。

生まれ故郷である大江町では毎年8月15日に、水郷大江夏まつり灯ろう流し花火大会が最上川河畔で盛大に開催されるのですが、2017年で95年目というこの花火大会を始めたのは、実はラジオ店を始めた祖父とその友人たち。

だから、というわけではないのですが、うちの店は毎年、音響システムを担当。町内をくまなく歩き回って音のバランスを確認するなど、大会を盛り上げるお手伝いをしています。

また、大江店で働く私の妻は、お客さまが商品を手にとりたくなるような店頭POPづくりで受賞するなど、身内が言うのも何ですが、ちょっとユニークな才能の持ち主。店が85周年を迎えたときはカイノ電器の歌をつくったり、また山形に新幹線が走ったときは新幹線の歌をつくって話題となり、山形の観光大使的なこともお手伝いさせていただいたこともあります。

私は山登りも趣味なのですが、日本百名山の一つである朝日連峰に息子たちと登ると、この町に生まれた幸せをつくづく感じます。

学生時代の友人たちの多くは、都会に出ていきましたが、いつまでも彼らの誇りである故郷であればと願います。

お客さまのお話

晋くんのことは、“寒河江の息子”と呼んでいるんです。
息子なら言ってもうるさがるようなことも、
何かと面倒みてくれるんですよ。

川越様

写真:海野さんと川越様が話している様子

晋くんは、うちの息子と高校の同級生。息子は家を離れて仙台に暮らしているんですが、晋くんは息子の代わりに、何かとサポートしてくれます。

私は風景写真を撮るのが趣味なんですが、彼も趣味が豊富で、喋っていても楽しいですね。

おいしいものがあると、晋くんを呼んで、一緒に食べたりしているんですよ。

もちろん、家電のことも、パソコンのことも、何から何までおまかせしていれば安心です。

お店の情報

名称
カイノ電器
住所
〒990-1101 山形県西村山郡大江町大字左沢198 店舗詳細を見る
電話番号
0237-62-2564
名称
カイノ電器寒河江店
住所
〒990-0041 山形県寒河江市大字寒河江字塩水5 店舗詳細を見る
電話番号
0237-86-7771

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