“宮古は、人間の都”
人を思いやる心が、
この島には生きています。

境遇が似ているせいか、
松下幸之助さんに共鳴し、学ぶことが多いんです。

私はここ宮古島で生まれたんですが、経済的にはかなり貧しい家庭で育ちました。

家は農業と出稼ぎで生計を立てていて、早く親をラクにしたいと子ども心に思っていました。

中学を卒業したら働こうと思っていたのですが、兄にあたる人が高校進学の学費も住むところも面倒を見てくれました。感謝しても、しきれないですね。

高校を卒業すると集団就職で、横浜の自動車工場に勤めました。

沖縄からは、まだパスポートが必要な時代でしたね。

給料のうち半分は、ドルで実家に送金していました。

自動車工場ではライン作業だったのですが、作業が遅れたりして困っている人がいると、私はごく自然に、手伝おうと足が向いたものですが、ほかの人たちは手伝おうとしない。

島の人たちとは、ずいぶん違う人たちだなぁ、と思ったものです。

松下幸之助さんも９歳にして丁稚奉公に出され、苦労しながら道を拓かれたと思います。

こう言っては何ですが、生い立ちに親近感をおぼえることもあり、幸之助さんのいろんな言葉が胸に染みます。

人間のあるべき姿を教えてくれるような気がするんです。

苦労して育っていると、相手の気持ちを考えるようになりますね。

幸之助さんはつねに、「それで、お客さまは喜びますか」と周りにも自分にも問いかけていたようですが、周囲のことを第一に考えながら、自分の成すべきことを極めていった方だと思います。

そういう姿勢を尊敬しています。

売ることよりも、困っている人を助けたい。
それでいいと思っています。

横浜の自動車工場で数年間働いたあとは、宮古島にUターンし、みなもと電器という街のでんきやさんに就職しました。

いまの、パナプラザみなもと店にあたります。

先代の社長さんにスカウトしていただき、入社１年目には、支配人の名刺をいただき、たいへん目をかけていただきました。

11年ほど勤務したのち、売り上げのことは気にせずマイペースで、とにかくサービス重視を貫く店をつくりたいと、独立を申し出ました。

それなら支店として、という有難い話もいただいたのですが、妻と二人で自分の店を持つ決意をし、店名を新邦家電（しんぽうかでん）としました。

開店資金も少なく、中古の軽トラック一台からスタートしようとしたところ、みなもと電器の社長さんが新車をプレゼントしてくださったうえ、土地のお世話から、何から何までサポートしてくれました。私の恩人です。

まさに、宮古の人です。

いまも仕事は当初の思いどおり、儲けは後回しでも、お困りごとを助けたいという気持ちでやっています。

田舎は何でも、「いますぐ」なんです。

「電球が切れたよー」と電話があったと思ったら、しばらくして「まだ届かないよー」と電話がある。

商品をお届けするついでに、「ちょっとアレも買ってきてー」なんて頼まれることもありますね。

島の最東端の東平安名岬（ひがしへんなざき）あたりにもお客さまがいらっしゃるのですが、クルマで30分ほどかかり、時にはガソリン代のほうが高くつくことも。

でも、お客さまが横のつながりで宣伝してくれて、新たなお客さまを増やしてくれます。

パナプラザグループとして４店舗が協力し合い、
電化調理体験パーティなどを開いています。

宮古島では現在、うちを含めて４つの店舗がパナプラザグループを結成しています。

私がお世話になっていたパナプラザみなもと店は、先代の社長のあとをご長男が継ぎました。

パナプラザ ノヒナ店は40歳のご長男とお母さんが頑張っているし、古くは陶器屋さんとして親しまれていたパナプラザ タケシマ店も仲間です。

毎月１回は集まって、サービスの質をどう高めていくかなどの意見交換や、技術の共有化などをしています。

もともと宮古は、自分が自分がと競争し合うような人柄ではないんです。

お互いに、いい協力関係を結んでこそ、お客さまにもより良いサービスができると思います。

先日は４店舗が合同で、オーブンレンジや炊飯器を使ってのお料理体験パーティを開催しました。

宮古は、子どもが小学校に入学した、高校に入った、成人式を迎えたと、イベントのたびに大勢が集まって大宴会。どのご家庭もなかなかの料理の腕前なんです。

今回初めての開催だったのですが、たくさんのお客さまに参加いただき大好評でした。

どの店舗も奥さんたちが大活躍で、あらためて女性パワーを感じましたね。

これからもグループの仲間たちと楽しく、島の人たちのお役に立っていきたいですね。