
お客さまと店の間に“それぞれの物語”
vol.89
街のでんきや開業の話
人生でいちばんたくさんの
「ありがとう」を
もらった一年でした。
兵庫県神戸市
シヨーデン
森野芳彰
街のでんきやを始めて、まだ一年あまりですが、
心に染みるさまざまな出会いがありました。
私は若い頃から「50歳になったら会社をやめて、何か別のことをしよう」と漠然と思ってはいたのですが、本当に50歳を過ぎて、こうして自分が街のでんきやをやっているなんて、何だか不思議な気もします。
私は電機メーカーに勤務していたのですが、在職中に知り合った街のでんきやさんたちが、あまりにもイキイキと仕事をされているのに触発され、人生の後半は、自分も街のでんきやをやりたいと決意を固めました。
2017年、地元の神戸でわずか7坪の街のでんきやを開業したのですが、少し行けば量販店もあるのに、小さなでんきやを始めるなんて無謀じゃないかという声も聞こえてきました。
しかし、オープンするや、町の方々がうちの開店を待ってくれていたかのように、いろいろな相談ごとが寄せられました。
最初のお客さまは、母の友だち。玄関のセンサーライトが点かないけれど、どこに頼んだらいいのかとお困りでした。
あるお客さまは、「電気のスイッチを交換してほしいと工務店に頼んだけれど、今度行ったときにやりますからと言われて、もう3年」と、うちにご依頼くださいました。仏壇を置く台の脚が壊れてしまったので、修理できないかと持ち込まれたこともあります。
そして、開店して間もないある日、こんなことがありました。
洗濯機を買うために、
量販店とご自宅を行ったり来たり…の、おばあちゃん。
私が店にいると、おばあちゃんがドアから顔を覗かせ、「こんなとこに、でんきやが出来たって知らんかったわ。アンタんとこ、洗濯機あるの?」とお尋ねになります。見れば、歩行器を押していらっしゃいます。
お話を伺うと、洗濯機を買い替えようと量販店を訪れたけれど、「何キロの洗濯機がほしいか?」と聞かれて答えられず、「家へ帰って調べてから、もういちど来て」と言われたとか。 足を引きずりながらご自宅に引き返し、また店に伺うと、今度は「防水パンの大きさは、どれぐらいだった?」という質問。さっぱりわけがわからずにいると、「寸法を測って、また来て」とのこと。
行ったり来たりで、本当にお気の毒。疲れきった顔で、「アンタ、何とかしてくれへん?」とおっしゃいます。
さっそく一緒にご自宅にお伺いし、置き場所などを確認したうえで、その日のうちに洗濯機をお届けしました。
お年寄りたちが楽しみにしているカラオケ交流会。
歌いたい曲をダウンロードして差し上げています。
このおばあちゃんとのご縁をきっかけに、でんきやをやると決めたときには想像もしていなかったことをお手伝いするようになります。
おばあちゃんが住んでいる団地では、毎週土曜日、お年寄りたちが集会所に集まってカラオケするのを楽しみにしているのですが、使っているカラオケ装置はスナックの払い下げ。いつ壊れてもおかしくないのをだましだまし使っていたところ、ついに寿命。唯一の娯楽だったカラオケ交流会ができなくなると、みな落胆されています。そこで、手頃なご家庭用のマイクカラオケを調達して差し上げました。
使い方をお教えし、さあ、これでカラオケ交流会を再開できると思いきや、お年寄りたちから、思ってもみなかった不満の声。みなさん、かなりのご高齢ですから、お歌いになる曲も私たちには馴染みのない曲ばかり。カラオケにあらかじめ内蔵されている曲目リストに、自分たちが歌いたい曲が入っていないとおっしゃるのです。
好きな曲を追加するには、パソコンなどからダウンロードしてチップに入れなければなりません。お年寄りのリクエストに応じてダウンロードして差し上げるのが、うちの役目になりました。
毎週毎週、新たに何十曲と寄せられるリクエストは、曲名や歌手名があやふやだったりして、世代の離れた私たちには曲を探し出すのもひと苦労ですが、我先にとマイクを握るお元気な姿を見ると、うれしくなります。
多くの出会いを通じ、街のでんきやを開業して本当によかったと思います。ビジネスマン時代には経験したことがないほど、たくさんの「ありがとう」をいただいています。
お店の情報
- 名称
- シヨーデン
- 住所
- 〒652-0872
神戸市兵庫区吉田町2丁目39-11店舗詳細を見る - 電話番号
- 078-682-7739
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