お客さまと店の間に“それぞれの物語”
vol.1被災した町と人びとの絆
きっといつかお役に立つ日が来る。
難を免れた電気製品を、店でお預かりすることにしました。
昨年の3月11日、あの一日で、私の住む町(宮城県七ヶ浜町)は姿を変えてしまいました。津波は私の店のほんの1メートル手前で止まり、幸いにも家族も従業員も無事でした。しばらくは、あまりのことに呆然としていたんですが、3日目くらいになると、お客さまがどうされているか心配で心配で、何かお手伝いできることがないか、訪ねて回ることにしました。断水が続いていましたから、エコキュートをお使いだったお宅には、生活用水の取り出し方についてご説明にあがりました。私の顔を見るなり、「おー、生きったがー」と声をかけてくださるお客さまもいらして、お互いウルウルとしちゃいましたね。
そのうちガソリンが尽きて自転車で回っていたんですが、1階は浸水し2階部分だけ残っているお宅に、取り付けたばかりの地デジアンテナやエアコン、照明器具などが残っているのを目にしました。まだ使えるのなら、取り外して、私の店でお預かりしておこう。正直、お客さまの安否もわからないなか、お電話するのもこわかったのですが、ご連絡を差し上げ、何件かのお宅の電気製品をお預かりすることにしました。取り外しにいったお宅で、ご家族のアルバムを見つけたこともあり、それは避難所にお届けしました。
お預かりしている商品を、
一日でも早く、一台も残らず、
お客さまのもとにお返ししたい。
あれから一年数ヶ月、避難所や仮設住宅を出て新しいスタートをきられたお宅に、お預かりしていたアンテナやエアコンを取り付けに伺うときほど、うれしいことはありません。「やっと自分のうちでテレビを見られるようになったわぁ。」そんなお客さまの言葉が、本当にずしりと心に響きます。しかしまだ、私の店にはお預かりしているままの商品がいくつもあります。「うちは新しい家の見込みもないし、預けたままも不憫だから、よそで使ってもらってよ。」とお申し出になるお客さまもいらっしゃいます。
私は言いました。「何年でもお預かりします。何年でも待ちます。ご自分であきらめて線引きなさらないでください。」その方の奥さまは泣いていらっしゃいました。出口の見えない暮らしを強いられている方々が、本当にまだまだ大勢いらっしゃるんです。
「思いやりの給湯器」、私の宝物です。
多くのご支援をありがとうございます。
この震災ほど、人の絆を感じたことはありません。震災から1ヵ月ほどたって、やっと水が復旧したんですが、お客さまの給湯器が津波でやられてしまい使えない。私の店の貸出機も破損している。何としてでもお客さまに、ご自宅であったかいお風呂に入っていただきたい。そんな思いから、給湯器を送ってくださるようブログでお願いしました。すると、全国のパナソニックの店からも、他のお店の方からも、何台もの給湯器が、あたたかい励ましのお言葉とともに寄せられたんです。ありがとうございます。本当に「思いやりの給湯器」です。みなさまのお気持ちは、私の宝物です。この震災では、大切なことを学びました。私のお客さまでもある牛乳屋さんは、ご自分が被災されているにもかかわらず、泥だらけになった牛乳を1本1本洗いながら、避難所のみなさんに届けていらっしゃいました。ご自宅の太陽光発電の電気を使って井戸の水を汲み上げ、ご近所に水を分けていらっしゃった方もいらっしゃいます。私の仕事も、お客さまのお役に立ち、お客さまに喜んでいただくためにある。そんな思いを、改めて強くしています。
※ここでご紹介したサービスは、この店独自のものです。すべての店で行われているものではありません。