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お客さまと店の間に“それぞれの物語”

vol.77でんきや一年生の話

「仕事が面白くて仕方ない」と友だちに言うと、「アホちゃうかー」と笑われます。

とにかく地元が好き、人が好き。街のでんきやをやっている親父って、幸せだ。

僕が生まれ育ったのは、瀬戸内海に面した下津井という港町。
小さな島々が浮かぶ穏やかな海を、瀬戸大橋が渡る眺めはとても雄大で美しく、この町に生まれてよかったなぁと思います。地元の人の多くは漁師さんで、タコ漁がとても有名。江戸の昔は北前船で栄えていたそうですが、いまは人口も少なく、過疎化・高齢化が進んでいます。
うちの店は祖父が創業し、父が二代目。僕は高校時代までは野球に夢中で、店の手伝いをしたこともなく、卒業後は会社に就職しました。就職してからは時間のあるときに店を手伝うようになったのですが、働く父を間近で見ているうちに、目覚めてしまったんです。
「街のでんきやって、何て素晴らしい仕事なんだ。この仕事をしている親父って、何て幸せなんだ」と。確かに仕事は大変です。夜も明けきらないうちから、「寝とったんかー」と言いながら、
「漁船の魚群探知機がおかしくなったー」とか「海苔加工場の電気がつかん」と、電話がかかってくる。あるときは深夜に、「金庫を開けてくれー。朝までにどうしても証書が必要なんや」と、電気とは全く関係のないSOSがあったこともあります。
「寝とったわー」と返事しながら父は駆けつけるのですが、町の人から本当にいっぱい「ありがとう」の言葉をもらっている。僕は何かの本で、人の価値はありがとうの数に表れる、という言葉を読んだことがあるのですが、みんなに感謝される仕事をしている父は幸せだと思いました。
僕自身、人と接するのがとても好きなこともあり、父のようなでんきやになりたいという気持ちがムクムクと湧き上がりました。あるとき意を決して「会社を辞めて、でんきやをやる」と宣言したら、父から返ってきたのは、「松下幸之助商学院に行かないなら、でんきやをやらせない」という言葉。松下幸之助商学院というのは、父も学んだ全寮制のでんきやさんの学校で、でんきやとしてのスキルとともに人間教育に重きをおいています。父の助言に従い、僕も商学院に入りました。
ここで同期の仲間と切磋琢磨した一年間は、野球部だった僕も味わったことのないほど厳しくも、
かけがえのない素晴らしいもので、父もそれを体験させたかったのだとわかりました。そして2017年3月、商学院を卒業し、いよいよ、でんきやとしての毎日が始まりました。

最初の大きな仕事は、身体がご不自由な息子さんがいらっしゃるお宅の、お風呂のリフォームでした。

滋賀県草津市にある商学院を卒業したその日、地元に帰るとさっそく、スーツ姿でお客さまのところにご挨拶に伺いました。
僕が寮生活を送っている間、たくさんのお客さまが「息子はいつ帰ってくるんやー」と、気にかけてくださっていたそうなんです。実際に仕事が始まると、日々、新しい経験の連続。たとえばエアコンの取り付けなども、商学院でみっちりと習得してきましたが、実際の現場は一軒一軒みな違う。
なかには、こんな狭いスペースでどうやって設置作業をしたらいいのか、と頭を抱えてしまうようなこともあります。
でも、見えないところまで決して手を抜かず、自分にとって恥ずかしくない仕事をしていきたいと思っています。これまで特に印象に残っているのは、お風呂のリフォームの仕事。そのお宅は85歳になるお母さんと半身麻痺の息子さんの二人で暮らしていらっしゃるのですが、「息子がお風呂に入りたがらなくて…」とお母さんがポツリ。確かにお風呂場には段差があり、浴槽も深く、麻痺のある息子さんが足を滑らせでもしたら大変です。僕は父に相談しながら、息子さんが安心して入れるお風呂を徹底的に考えました。浴槽を浅くしたり、段差をなくすことはもちろんですが、入り口の扉は二つ折りの折戸から、横へのスライド式に変更。折戸ですと、手をついた拍子に体重が前にかかってつんのめる危険がありますが、スライド式ドアならスムーズ。
また脱衣場のクロスも、身体を支えるために手をつくことが多いと思い、引っかからない素材のものにしました。介護保険申請の手続きもお手伝い。息子さんにもお母さんにも喜んでいただくことができましたが、僕自身の貴重な経験になりました。

僕の夢は、2020年を目標に店を広くすること。地元のコミュニティ広場にしたいんです。

仕事を始めてまだ3カ月余りですが、想像していた以上に時間がなくてびっくり。
おかげさまで、毎日忙しくさせていただいています。いまは、ひとつひとつのご依頼にていねいにお応えすることに一生懸命ですが、僕には夢があります。まずひとつは、エアコンの全台点検。
毎年、全てのエアコンを一台一台点検しているお店があることを知り、これこそ街のでんきやさんだと感銘しました。実際の仕事に追われるなかで、とても難しいことですが、そんなでんきやになれることが目標です。そして、もうひとつの夢は、2020年東京オリンピックの年に、店を拡張すること。単に売場を広げたいわけではなく、真ん中に大きなテレビをパブリックビューイングみたいに置いて、町のみんなと楽しみたいんです。
過疎化が進んで交通も不便なこの町では、お年寄りはなかなかお出かけする機会がありません。そんなお年寄りから子どもたちまで、ひとつの場所に集まって楽しめたら素敵だなぁと思って。
とにかく地元のことが好きすぎるほど好きです。今日はこれから、瀬戸大橋を渡って、櫃石島(ひついしじま)という島のお客さまのところに行ってきます。

よそのでんきやさんのことは知らんけど、このコは、かゆいところに手が届くんです。 石津様

お父さんもよく気がつくけど、このコがまたよく気がつくんです。
今日もエアコンのクリーニングに来てくれたと思ったら、「リモコンの時計、合わせといたよ」と、ちゃんと直しておいてくれる。よそのでんきやさんのことは知らんけど、サービス満点。こういう若いコがいると、町も明るくなる。下津井の人気者です。

※ここでご紹介したサービスは、この店独自のものです。すべての店で行われているものではありません。

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